第57回定期演奏会(2025.6.7)指揮 横山奏さんが語るそれぞれの曲への想い

この日のプログラムの構成をシエナの企画委員と共に考えられた指揮の横山奏さんに、1曲ずつのエピソード、シエナ・ウインド・オーケストラや松井秀太郎さんとのリハーサルについてお聞きしました。終始朗らかな笑顔の横山さんから、音楽に対する想いや楽しみ方が感じられるお話でした。

 

1曲目:ゴーブ「アウェイデイ」

横山:
聴くだけだったらめちゃくちゃかっこよくて楽しい曲なのですが、実は今日のプログラムの中で一番難しい曲です。めちゃくちゃ難しい。
技術面でも難しいけれど、その中でトリフォニックなところ、色々な声部が独自に動いているところがあります。全部同じ拍子で書かれていますが、実際鳴っている拍子感は、6/8拍子だったり3/4拍子だったり4/4拍子だったり。いくつものリズムが重なって演奏するので、僕にとっても全てを聴き取りながら指揮をするのが難しい。集中していないと混乱してしまいます。シエナのメンバーもかなりヒーヒー言いながらやっています(笑)。
でも2回の練習で、初日の通しに比べて昨日はビシッと決まり、クオリティも全く違うものになっています。今日もこの後のゲネプロで一回通しておこうと思いますが、たぶん今出ているレコーディングされたどの「アウェイデイ」よりも良い演奏だと思っています。

今日の演奏は、どの「アウェイデイ」よりも良い演奏だと思っています。

2曲目:スパーク「ドラゴンの年」

横山:
1曲くらいは有名な吹奏楽の作品を入れておこうと決まった曲です。スパークがシエナ・ウインド・オーケストラのために2017年に書き直して、本人の指揮で演奏されました。こちらの方がスパークは気に入っていて、実際に良いと思います。
タイトでドライな部分も多いですが、2楽章はすごく美しい。
スパークは素晴らしい作曲家で、僕にとってはモーツァルトみたいな存在の作曲家です。色々なアイデアが溢れるように出てくるのだろうなという印象です。

3曲目:アルチュニアン「トランペット協奏曲」(トランペット:松井秀太郎)

横山:
松井さんはすごい才能の持ち主です。最近、若くして音楽の才能のある方が多いですが、松井さんのトランペットはとても素晴らしいです。彼の真骨頂はジャズ風の即興演奏ですね。
今回はアルチュニアンに取り組んでくれましたが、演奏の仕方やアプローチの仕方が松井さんならでは。色々なところのちょっとしたニュアンスなど。
実はカデンツァの部分(ソリストが独奏する部分)は、僕たちもまだ一度も聞いていないです。きっと今日は独自の即興を聴かせてくれると期待しています。有名なカデンツァをベースに、彼独自で色々と挑戦してみると聞いています。

4曲目:ブラッドリー「トムとジェリー」

横山:
この曲の前に休憩を挟みますが、松井さんが参加したアルチュニアンの後で、さらにジャズの松井さんが編曲した「死の舞踏」の前に何をやろうかと考えて、少し短めの元々はオーケストラの曲を選びました。音楽は物語をできるだけコミカルにするかのように、状況描写や場面がころころと変化していきます。トムとジェリーのアニメによく出てくる、壁にバン!とぶつかるシーンもあれば、シエナのメンバーが猫やネズミの鳴き声もやりますよ!

本番前のリハーサル

5曲目:サン=サーンス「ダンス・マカブル(死の舞踏)」(トランペット:松井秀太郎)

横山:
本来はヴァイオリンソロの曲。それを松井さんがトランペットソロで編曲されました。ジャズ風にアレンジされている部分もあります。即興の部分は、リハーサルでも毎回違う風に演奏されています。今日も楽しみですね。
松井さんはこの曲をピアノとアンサンブルで録音されていますが、それをベースに、今回はシエナのために新しく編曲されました。

6曲目:アルボ「バレエ」

横山:
僕がオランダに行ったときに、吹奏楽の祭典で初めて聴いた曲です。すごく印象的で楽しい曲だなと思いました。誰も知らない曲だと思っていたら、日本ですでに初演されていたのでショックを受けた曲でもあります。
アルボは、ポピュラー音楽や映画音楽を作っていて、スペインではモリコーネ(映画「ニュー・シネマ・パラダイス」の作曲家)のような存在だと思います。そのアルボが書いた吹奏楽作品です。
今日の他の曲に比べると難しい部類の曲ではないですが、ポピュラーに近いクラシカルのテイストで、演奏する人によって色々な解釈がある曲です。フレージングをどうするか、音符ひとつひとつをどういうニュアンスで演奏するかをたくさん突き詰められます。
聴いていても愉快な曲なので、きっと楽しんでいただけると思います。

シエナ・ウインド・オーケストラ第57回定期演奏会のプログラムを手にする横山奏さん

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