2003年6月 「ブラスの祭典2レポート」(レコーディング編)

by 本間千也(トランペット奏者)


 「ブラスの祭典2」を録音してからもう1年半が経ちました。
 レコーディングのレポートを書くにあたり、ふだんから物覚えが悪く、昔のことなどすぐに忘れてしまう性格なのですが、大変ハードだったレコーディングの事は、今でも鮮明に覚えています。
 吹奏楽のCDとしては異例のクラシックヒットチャート第1位を記録した「ブラスの祭典」1作目の好評を受け、次作はいつ何をという期待がいやがおうでも高まる中、2作目のレコーディングが決まったのを聞いたときの心境は複雑でした。
「前作同様、またはそれを上回る録音をしたい!」という前向きな気持ちと同時に、
「前作の大ヒットで、さらに高まるファンの期待に応えられるのか?」、
「トランペットを酷使する曲目が多くて、体力的に持つのか?」という不安もありましたが、
楽天的な血液型O型ということもあってか、
「とにかく決まった以上、ベストを尽くしてやるしかないだろう」と開き直って練習初日を迎えました。
 今回のレコーディングスケジュールは、12月9日から4日間のリハーサルと宮崎・横浜・秦野・松本・松戸の5カ所で公演を行った後、年明け早々の1月8〜10日の3日間で録音するというスケジュールでした。
 前作同様、今回もリストアップされたバーンスタインの作品は、「プレリュード、フーガとリフ」という曲で、前作CDの「シンフォニックダンス」ではジャズの要素が多く含まれ苦労しましたが、この曲は編成もスタイルも、もろにビッグバンド・ジャズのスタイルで、ふだんクラシックを主として演奏している我々が商品として高い完成度でライブと録音が出来るのか、
「クラシック屋さんがちょっとジャズ屋を真似てみましたよ〜ん」
位の出来では済まされないという事はすごくよく解っているだけに、私の心中には大きな不安を抱いていました。
 実はこの辺に関しては、マエストロ佐渡裕氏には、レコーディングが決まるもっと以前から、彼の脳内で隠れて練られていた策略があったのではないかと想像しています。
 バーンスタインの弟子であった佐渡氏は、シエナでのレコーディング第1段に「シンフォニックダンス」を選曲したことはごく自然な選択で、録音は大好評を得られましたが、「プレリュード・フーガとリフ」は実は彼にとっては大変思い出深い曲だったのです。吹奏楽と同じ管打楽器のみの編成のこの曲を、いつか絶対シエナで演奏してみたいと思う気持ちが、シエナとの公演を重ねるにつれて強くなっていったのは想像に難くないでしょう。しかし、ジャズ色の濃いこの曲をクラシック奏者集団のシエナでやるには、簡単には踏み切れない不安要素が、私と同じようにかなりあったのではないでしょうか。
 レコーディングの話題から逸れますが、日本ジャズトランペット界の人気No1の原朋直氏と、数年前の定期演奏会でアルチュニアンの協奏曲の共演をしました。それをきっかけに以後ヤングピープルズコンサート等で、4年間に渡っての共演へとつながりました。
 ジャズ奏者がクラシックの協奏曲にチャレンジするということは、とても大変なことで、彼の場合はすでにジャズ界での知名度が高いため、中途半端な演奏で失敗したときのイメージダウンのリスクがかなりあったはずですが、何カ月にも渡ってクラシック奏者のレッスンを受け、フランスに渡って佐渡氏とのトレーニングを積み、本番ではクラシック奏者の想像をはるかに越えた素晴らしいパフォーマンスを演じてくれました。クラシックとジャズとのジャンルの垣根を越えた素晴らしいパフォーマンスと共演でき、シエナの私たちも非常に感銘と刺激を受けることができました。
 この共演を機に、ヤングピープルズコンサートや、彼の発案で立ち上げた「原クインテット&シエナブラスファンタジー」での
共演を重ね、原氏の好意によるジャズ勉強会を金管セクションの有志の参加で時々行う等によって、シエナ楽団員はジャズのニュアンス・奏法を少しずつ覚えることができました。
 これが、佐渡氏が考えていた策略だったのか、それとも結果的な事だったのかは定かではありませんが、この原氏との交流が「プレリュード・フーガとリフ」の公演・レコーディングで、リズムや発音等のニュアンス作りに非常に役に立ち、聴衆に好評をいただけた仕上がりに繋がったのではないでしょうか?

 さて、レコーディング当日の状況等は、CDのブックレットに書いてありますので、そちらを是非買って読んでいただくとして(笑)簡単に書こうかと思います。
 高品質の仕上がりを期待された録音だったので、指揮者・演奏者・録音スタッフ全員の熱い意気込み満ちた録音会場でしたが、そんな緊張感ある会場で、演奏会の常連客として毎回来ていただいているYさんが、ケータリングのサポーターとして3日間お手伝いくださいました。皆の水分・ブドウ糖の補給の為にお茶やコーヒー、甘い菓子を用意してくださったり、演奏が煮詰まってきたときには「頑張って!」いい演奏が出来たときには「良かったよ!」の掛け声が、大変ありがたく力になりました。
 Yさんはシエナの演奏会はもちろん、他の個人的な演奏会にも頻繁に来ていただいたり、すっかり団員とは顔なじみとなっていますが、このようなファンの方々との交流が、今後徐々に増えていけたらいいなと思いました。
 初日に録音し一旦OKが出たにもかかわらず、最終日に再度取り直してまでより高い完成を目指した「オリンピックファンファーレ」、最高のゲストを迎えて、吹奏楽の形態から離れたスタイルに挑戦した「プレリュード・フーガとリフ」、バンダの立ち位置と台の高さにまでこだわり、高所恐怖症のトランペット奏者が恐怖と戦いながら演奏してくれた「ローマの祭り」、ボディーパーカッションでは毎度笑わせてくれる荻原さんによるティンパニの力強い熱演が印象的な「二つの交響的断章」、木管のハーモニー・バランスにかなりの神経を使い、管楽器で息の長いフレーズを表現力豊かに演奏することの難しさを実感した「エルザの大聖堂への入場」、柔らかいサウンドで歌い上げた「ロンドンデリーの歌」、すべての曲目で最高の出来を目指し、最高のレコーディングスタッフ、最高の機材、熱意溢れる演奏者、最高の指揮者、そして、前作CDを買っていただき第2作に期待を寄せる多くのファンに支えられて、無事に録音を終えることが出来ました。
 
 未だ聴いたことがないという方がもしいらっしゃいましたら、是非買って聴いてください!
 乱文でしたが、レコーディングレポートとさせていただきます。

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