第4回 コンクール課題曲ヒネクレ徹底分析

by 富樫鉄火(音楽ライター)

 6月18日(金)に開催される、シエナ・ウインド・オーケストラ第17回定期演奏会では、本年の吹奏楽コンクール課題曲が、数曲演奏されるようだ。

 しかも、吹奏楽総合情報サイト「バンド・パワー」との連携企画で、「課題曲クリニック」なる企画も始まっているようで、いよいよ、今年もコンクールの季節が近づいていることが実感される。

 そこで、今年の課題曲を、ちょっと変わった角度から分析してみよう。

 なお、今年の課題曲は、以下5曲である。

[ I ] 吹奏楽のための「風之舞」(作曲:福田洋助)
          ・・・第14回朝日作曲賞受賞作品<小編成対応>
[ II ] エアーズ(作曲:田嶋勉) <小編成対応>
[ III ] 祈りの旅(作曲:北爪道夫)・・・委嘱作品
[ IV ] 鳥たちの神話(作曲:藤井修)
[ V ] サード(作曲:田渕浩二)・・・大学・職場・一般のみ。

★けっこう気になる「演奏時間」

 基本的に、課題曲の演奏開始〜自由曲の演奏終了が「12分以内」と決まっている以上、課題曲は、その半分くらいで演奏できるように書かれているはずなのだが、それでも、自由曲の演奏時間との兼ね合いで、「なるべく短い課題曲」を選ぶバンドもあるだろう。あるいは、逆に、自由曲が短いので「長めの課題曲」を求めるバンドもあるかもしれない。

 連盟が発行している、デモCD(指揮:金洪才、演奏:大阪市音楽団)では、課題曲の演奏時間は、以下のようなタイミングになっている。

[ I ] …… 5'08"
[ II ] …… 5'30"
[ III ] …… 4'50"
[ IV ] …… 4'59"
[ V ] …… 4'41"

 このデモ演奏時間をもとに、課題曲と自由曲の「間」(ティンパニのチューニングなど)を、仮に30秒〜60秒とすれば、必然的に、自由曲は、以下の時間内で演奏できる曲に限られてくる。

[ I ]を選んだ場合 …… 5'52"〜6'22"の自由曲
[ II ]を選んだ場合 …… 5'22"〜5'52"の自由曲
[ III ]を選んだ場合 …… 6'10"〜6'40"の自由曲
[ IV ]を選んだ場合 …… 6'01"〜6'31"の自由曲
[ V ]を選んだ場合 …… 6'19"〜6'49"の自由曲

 どうだろう。けっこう、課題曲次第、あるいは、曲間の取り方で、ずいぶん、自由曲の選択肢も変わってくることがお分かりいただけると思う。 せっかく一所懸命練習したのに、本番でタイムオーバーで失格なんてことになったら、泣くに泣けない(毎年、けっこういるんだよね、タイム・オーバーで失格バンドが)。ぜひとも、演奏時間も十分考慮して、課題曲と自由曲を選ぼう!

★小節数とオタマジャクシの関係は?

 もちろん、テンポにもよるが、小節数が多ければ、自然とオタマジャクシの数も多くなる傾向があるはず・・・と思いがちだが、そうでもない。 一応、スコアを見てみると、課題曲5曲の全小節数は、こうなっている。

[ I ] …… 全144小節
[ II ] …… 全116小節
[ III ] …… 全124小節
[ IV ] …… 全124小節
[ V ] …… 全115小節

 しかし、V《サード》など、小節数がいちばん少ない割りには、おそらく、オタマジャクシはいちばん多そう。何しろ、全編が「十六分の十二拍子」。つまり、「1小節の中に、16分音符が12個ある」ってわけ。そして、その「16分音符」が、3個でひとかたまりの三連符扱いになっている。ということは、「四分の四拍子」の曲で、1拍が三連符・・・と同じ。

 そして、最初から最後まで、この三連符が休みなく続く・・・。さすがは課題曲V(大学・職場・一般のみ)である。息が続かないバンドには、なかなかの難曲かも。

★テンポ・リズムの変化にご注意!

 今回の課題曲5曲中、もっともリズムが変化するのが、III《祈りの旅》。 何しろ、全124小節中、「四分の三拍子」が63小節、「四分の二拍子」が77小節、「四分の五拍子」が1小節・・・となっている。

 要するに、ほぼ全体が、3拍子と2拍子で入り混じってできているのだ。この「入り混じって」というところがミソ。つまり、曲の途中でキレイに入れ替わるのではなくて、2種類のリズムが、入れ替わり立ち代り、次々と登場するのだ。

 まあ、全体的にゆったりした曲ではあるので、演奏していて目まぐるしさは感じないと思うけど、この「変化」が、曲のポイントの1つであることも事実だろう。 また、テンポの変化が多いのが、II《エアーズ》。

 テンポの動きだけを取り出してみると・・・

56 → poco rit. → 84 → フェルマータ → 120 → rit. → 84 → rit → 72 → 84 → フェルマータ(カデンツァ92) → フェルマータ → 5拍子 → molto rit.(アッチェル) → アラルガンド(rit.かクレシェンド) → 84
となっている。

 そのほか、演奏していると、特に楽譜に指定はないものの、ついリタルダンドしたくなるメロディーや、テンポを動かしたくなる部分が次々に登場する。この課題曲はクセモノだ。あまり曲の流れに身を任せすぎて、じっくり演奏しすぎると、タイムオーバーを誘発しかねない。これもまたご注意!

★恐怖のユニゾン・・・

 ユニゾンのむき出しは、おっかない。ごまかしが効かない。厳密なことをいえば、時間帯(特に、気温の低い早朝など)や季節、場所柄によって、ピッチのずれは、必ず起きる。それが、曲の冒頭だったりすると、そのパートの担当者は、本番前は夜も眠れなくなる。

 今回、冒頭からユニゾンが裸で登場するのが、IV《鳥たちの神話》。突然、Trp1〜3番までの全員ユニゾンで始まるのだ。そこへ、Hrn1〜4番のユニゾンが加わる。この冒頭6〜7小節間、ほかの楽器は、いっさい参加しない。誰も助けてくれない。

 TrpとHrnパートのユニゾンに自信がないバンドは、この曲は敬遠しておいた方がよさそう・・・?

★パーカッションもつらいよ!

 課題曲の場合、必ず、パーカッションは4〜5人で演奏されるように書かれている。そのうち、ティンパニやマレット類は、1人が専従で担当することがほとんどだ。しかし、残りは1人の奏者が持ち替えで、様々な楽器を担当しなければならない。

 今回、持ち替えの多いのが、I《吹奏楽のための「風之舞」》の、パーカッション3番。バス・ドラム、クラッシュ・シンバル、サスペンデッド・シンバル、スレイ・ベル、クラヴェスの5つを、次々と持ち替える。全体的にリズム感のメリハリがはっきりした曲なので、この担当者は、けっこう重要な役割を担うことになる。

 また、II《エアーズ》では、冒頭、グロッケンの三連符むき出しソロで始まる。グロッケンのソロで始まる曲というのも珍しい。本番の会場の大きさ次第で、音量のバランスも変えなければならないだろう。ちょっと緊張しちゃいそうだが、ぜひ、頑張って!

 さてさて、こうやって課題曲を眺めてみると、けっこう、どの曲も、それなりに大変な部分があるもんだ(だからこそ、課題曲なのだろうが)。

 今年は、どんな名演が繰り広げられるのだろうか。皆さん、頑張ってね!!

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